電車の中で  飯野 安弘

私も、松山での勤務は2年を超えることはなくいつもバイクでの通勤であって、たまにバスに乗るくらいであった。

 今は、電車がなくてはならない通勤手段となっている。

 ある朝、背の高いおばあさんが杖をついてそそくさと乗り込んできて周囲を見渡すことなく、一直線に反対側の出入り口の手すりにつかまった。

 女子高校生がすかさず席をたってにっこり「おばあさんどうぞ」といった。

 おばあさんは、やや無表情な顔つきで「次の駅でおりますので・・」と断った。

 女学生は負けじと「どうぞ・・・」とていねいに誘導した。

 おばあさんは、なぜか「いや次の駅でおりますから」とかたくなに断りつづけた。

 そのやり取りをしている間に次の駅についてしまった。

 降りるときおばあさんは、女子高校生に深々と丁寧にお辞儀をして去っていった。

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